結婚 恋

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話すことも出来ない片思いの相手から親友に

高校時代、部活内に特にこれというきっかけもなく、好きになってしまった男の子がいました。

 

男友達は何人もいましたが、それまでとは違うタイプの人で、同じ部活であっても、個人的に仲良くなることもありません。ただ少人数の部活だから、部活内の人間関係はとても良いし、その中の一人でしかありませんでした。そういった意味で、自分との関係に距離がある人を好きになったのも初めてでした。

 

なかなか話せないのに、ある雨の日の帰りに、傘を持たない私を傘の中に入れてくれたのなんて、今では本当に甘酸っぱい思い出です。

 

そんな彼は、自分たちのある先輩に恋をしているのに気が付きました。

 

しかしその先輩は、私も大好きな先輩。彼が先輩を好きであるのも納得で、私が男であれば私もこの先輩を好きになっただろうと思ったので、彼が先輩にアピールしている姿を見ているのは逆に微笑ましい気分でした。私には自分の片思いを成就させる気が毛頭なかったからです。

 

そんな彼が、先輩の引退とともに、告白をしました。

 

告白する瞬間も、後をついて帰っていったのでわかっていました。同時に、先輩には好きな人がいて成就しない事も知ってはいました。

 

けれど、先輩も私が彼のことを好きだということを、友人から聞いてしまっていたのです。

 

次の日、どうしようどうしよう!と私に罪の意識を感じている先輩に、手紙を書きました。自分の想いを正直に伝えました。『私は先輩のことも大好きだし、彼が先輩を好きなのも知っていた。先輩は何も悪くない、だから気にしないでください』と。

 

その後も、想いを汲み取ってくれた先輩とは変わらず仲良くあれました。

 

しかし、振られたその彼は先輩が引退してから様子が変わりました。

 

自分たちが3年生になって、私たちも引退したのち、登校拒否を始めたのです。

 

その理由が、『先輩にふられて、なにもかもどうでもよくなった』『学校に行く理由が分からない。排気ガスだらけの外に出る理由がない』
なんて幼稚な!と思いながら、好きになったきっかけもないので終わるきっかけも私にはありませんでした。恋愛なんて所詮、思い込み、このせいです。

 

最終的に卒業が危なくなり、部活の顧問から「学校に来るよう、連絡しろ」と言われ、私は電話して彼と初めて長時間、会話をしました。自分の電話は、影響があったのかはわかりません。

 

結果的に高校は卒業できましたが、その後の進路は決まっていないようでした。

 

卒業してから数年後、部活の仲間での飲み会がありました。

 

再会した彼は、相変わらず先輩を引き摺っていて、ニート状態でした。人と関わり合うのが面倒臭い、仕事もしたくない、そんな人間になっていました。

 

私自身は卒業してから、他の人と付き合ったりもしていましたし、一生懸命働いていました。

 

そんななか、当時メッセンジャーが流行っていました。それをしているというので、連絡先を交換しました。(携帯は知っていましたが…)
そこからメッセンジャーで週末はずっとやりとりをするように。

 

そんなある日、鬱々としていた彼が途中で、「もう本当に俺は俺が嫌いだ。出掛けて来る」とメッセンジャーをそのままにして外出してしまいました。

 

私はその時、彼が不在になったメッセンジャーに「君が何に悩んでいるかは知らないけれど、君が自分で自分を嫌いでも、私は君(友人として)のことが好きだし。私はあなたを見捨てたりはしない。見限るならとっくに見限っている。これを君が疑うのは勝手だけど、これは私の気持ちだからいくら否定されても嘘ではない」
と、そういう思いの丈を残しました。

 

彼が帰ってきたら、見るように。

 

今でも、何が言いたいのかわからない下手くそな言葉だったと思います。ただ私は、君のことが好きだと伝えただけでした。
それから数日後、彼から返信が来ました。『救われた』『俺のことを好きでいてくれてありがとう』『君は俺にとって大事な親友だ』と。

 

彼の中で、全く赤の他人だったところから、部活の仲間。私にとっては片思いの相手から、私は親友にまで昇格したんだ、と思いました。(5年はかかりました)
私は、自分の中に残った彼への僅かな恋愛感情みたいなものを、ずっと消化できずにいました。

 

それが、その瞬間、その言葉によって、『彼の親友になれた』という気持ちが、自分の中で彼への恋愛感情にピリオドを打ちました。

 

そこから、本当に邪な感情もなく、友人になれたのだと思います。

 

それから5年。
相変わらず、彼は、人付き合いが嫌いなのは変わっていません。それでも少しは大人になったのか、自分の周りにいて懐に入れた人間(2人しかいません)に対しては、価値が変わったようです。

 

今では、滅多に連絡を取り合う事はしませんが、「俺はあなたのことは大事にする」「あなたは俺がダメなときに支えてくれた。もしあなたが駄目になったとしても、俺はあなたを見捨てるようなことはしない」

 

と会った時に言ってくれています。何処かに行きたいとぼやいた私を、ドライブにまで連れて行ってくれました。
なんて嬉しい言葉をくれるようになったんでしょうか。自分のこと以外どうでもよかった人が。

 

彼とはずっと友達ですが、自分の恋が違う形で実ることもあるんだなと感慨深いです。

 

余談ですが、学生時代、おじいちゃんだった顧問が部内の恋愛模様を全て把握していたらしい、と聞いて、吹き出してしまいました。当時、彼と私の関係性が薄かったのにもかかわらず、先生が彼へ学校に来なよと私に連絡をさせたのはその為です。私なら連絡するだろうと。人生の先輩には敵いません。流石です、先生…。